05 ステントを併用した脳動脈瘤コイル塞栓術
病状
くも膜下出血、破裂脳動脈瘤に対して脳動脈瘤ネッククリッピング術を平成4年に当院で受けている女性で、術後、神経症状なく元気に過ごしていたが、20年を経過した平成24年に前兆のような症状と不安を訴え、来院。
検査方法と結果
MRI 検査を行うと、脳底動脈先端部に未破裂脳動脈瘤が明らかになった。さらに脳血管造影検査による精査の結果、脳動脈瘤の入口部(Ostium)が極めて広い(広頸: broad neck)形状の脳動脈瘤であることが明らかとなった。

脳血管造影検査(左椎骨動脈造影、タウン像)で脳底動脈先端部に広頸(broad neck) 脳動脈瘤が認められる(矢印)。
手術方法と結果
通常の脳動脈瘤コイル塞栓術は困難な形状であるが、脳動脈瘤用ステントを用いる事により、脳動脈瘤の塞栓を達成することができる。
※ステントを併用する場合に、ステントに血栓形成が生じないようにするために、抗血小板薬を2 剤服用して塞栓術を行い、術後も継続する必要がある。

脳動脈瘤用ステント(黄色矢印)留置後、脳動脈瘤内に1 本目のコイル(赤色矢印)を誘導したところを撮影した単純レントゲン写真側面像。

ステント併用コイル塞栓術終了時の単純レントゲン写真側面像。

ステント併用コイル塞栓術終了時の脳血管造影検査(左椎骨動脈造影、タウン像)で、脳動脈瘤は描出されない(矢印)。
患者様のその後
術後経過は良好で、神経症状なく退院。1年間の抗血小板薬の服用を継続し、1年後の脳血管造影検査において、脳動脈瘤の再開通もみられず完全に閉塞していることを確認することができた。それ以後抗血小板薬は服用せず、著変なく経過している。

脳動脈瘤塞栓術1年後に撮影された脳血管造影検査で、脳動脈瘤は再開通することなく完全閉塞を確認できる( 矢印)。
症例バックナンバー
- 01:脳動脈瘤
- 02:くも膜下出血
- 03:頭蓋内動脈の動脈硬化性狭窄症に対する血管内治療
- 04:超急性期脳梗塞に対する脳血管内治療
- 05:ステントを併用した脳動脈瘤コイル塞栓術