認知症ケアチームは通称DCT(Dementia Care Team)として活動しております。DCTの目的は、認知症を有する患者さんや認知機能の低下を有する患者さんの身体疾患への治療が円滑に行われるよう、認知機能に起因する問題に対して多職種(医師・看護師・社会福祉士・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・伏見区認知症初期集中支援チーム員など)が協働し活動しています。
活動内容
- チームカンファレンスと病棟回診
- 看護ケアの支援(患者情報収集・認知機能悪化予防計画の立案など)
- 退院支援(かかりつけ医やケアマネジャーとの連携)
- 職員教育(年1回以上)
- 認知症ケアマニュアルの作成と院内周知
- 相談事例への対応
各職種の役割
医師 | 対象患者の状態把握、診察・薬剤の処方・調整 |
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認知症看護認定看護師 | 対象患者の状態把握、実践されている看護ケアの把握、相談対応 |
病棟看護師 | 日々の認知症ケアの実践と評価・相談依頼 |
社会福祉士 | 要介護認定や入院前の生活状況の把握、退院先の調整とその支援 |
薬剤師 | せん妄ハイリスク薬と向精神薬使用の把握、薬剤の変更・調整 |
管理栄養士 | 食事形態・摂取量・栄養状態の把握、食事内容の変更・調整 |
理学療法士 | 日常生活動作評価、理学療法訓練の実施・生活様式の設定と調整 |
作業療法士 | 認知機能評価、作業療法の実施 |
言語聴覚士 | 嚥下機能評価、認知機能賦活訓練・嚥下機能訓練の実施 |
伏見区認知症初期集中支援チーム員 | BPSDの状態把握と観察、各諸症状におけるケアの助言 |
チームカンファレンスと病棟回診では、認知症と診断を受けている人やMCI(軽度認知障害)の人をはじめ、様々な疾患による身体症状や、入院における環境変化などにより認知機能の低下がある人、またその可能性がある人や、せん妄(身体疾患や中毒によって惹起される急性で変動する意識障害・認知機能障害)症状がある方に対し、身体疾患への治療が円滑に行われるよう、認知症に起因する問題に対して支援しております。
対象患者さんの情報を収集し、多職種でその情報を共有、その後、患者さんのもとへ訪室し入院環境や実際に行われているケアに認知機能低下を促す要因がないかなどをラウンドし、確認しております。認知症をもつ方はご高齢であることが多く、様々な疾患を有しそれに対する薬剤治療を行っています。そのため、入院前から現在の状態まで多角的な評価が必要となり、認知症ケアチーム員だけでは情報が足りません。そのため、日々かかわる病棟職員やご本人・ご家族・ご本人をよく知る方の情報が必要不可欠となります。
この機会に認知症ケアチームを知っていただき、今後の認知症ケアに繋げていきたいと考えております。
認知症ケアリンクナース会
月に1度、全病棟のリンクナースが集まり、認知症やせん妄に関する勉強会・情報共有などを行っています。各病棟に1名ずつリンクナースを配置しているため、病棟での困りごとや意見が小さなものであっても吸い上げられるだけでなく、電子カルテやラウンドだけでは拾い上げることができない患者さんの情報を知ることができています。
当院では診療科や機能により病棟を編成しているため、病棟により問題点や困りごとに特徴があります。自病棟だけでは解決しきれない問題であってもリンクナース会で共有することで、多角的な視点でディスカッションすることができます。その結果、横断的な活動ができるだけでなく、より質の高い認知症ケアの実践に繋がっています。また、定期的に開催することで、タイムリーに情報共有することができ、早急に対応することができます。
身体拘束適正化チーム
入院による環境の変化や身体疾患による影響から、新たに認知機能の低下・見当識障害などが認められることや、元々認めていた諸症状が重篤化する場合があります。その結果、患者さん自身の安全が守れなくなることで、必要な医療が受けられなくなる場合があります。その際に、身体拘束を検討・実施することがあります。
身体拘束は皮膚障害・循環障害・神経障害などの身体的問題や、精神的問題が発生することがあるため、可能な限り短期間かつ必要最小限となるように努めています。週に1度、医師・看護師・リハビリテーション科・医療安全管理室が全病棟をラウンドし、下記の内容などを確認・検討しています。
- 患者さん自身の意思尊重と尊厳の保障
- 身体拘束実施に影響している症状や行動
- 実施されている身体拘束の正当性の確認
- 身体拘束実施に影響している症状・行動の緩和
- 身体拘束終了に向けたケア
- 身体拘束が終了できた事例
- 身体拘束実施による医療者のメンタルヘルスケア
加速の一途をたどる高齢化に伴い、認知症を有する高齢者の増加が見込まれています。できる限り短期間かつ必要最小限の身体拘束となるよう、日々検討・実践していきます。